2006/02/08(水) 茨城新聞http://www.ibaraki-np.co.jp/

老舗映画館また姿消す 水戸東映シネマ、10日閉館
シネコン進出、共存難しく

水戸の老舗映画館が、また一つ幕を下ろす−。一九六〇年に開館し、水戸市宮町(通称・宮下銀座)の鳥居前で四十六年にわたって営業してきた水戸東映シネマが十日、閉館する。水戸駅北口から徒歩五分といった交通アクセスのよさから、シネコン(複合型映画館)との共存を目指したが、時代の流れにはあらがえなかった。閉館後はさら地にして地主である水戸東照宮に返す予定となっている。
 同館は東映直営の封切館で、約二十五年前に改装、一つだった大型スクリーンを二つに増設。「東映まんが祭り」や話題の邦画作品を中心に上映し人気を集めてきたが、近年は同市やひたちなか市にある「TOHOシネマズ」、つくば市内の「シネプレックス」などのシネコンに客足が流れ、観客数は激減した。
 数多い固定ファンの一人で、手書きの看板や建物の雰囲気が大好きだという日立市の会社員、綿引優子さん(19)は「水戸に十九年間住んでいたが、懐かしさを感じることができる映画館。母親と一緒にアニメを見に行ったのが思い出」と語る。同館支配人は「シネコンが近隣にできたことやダイエー水戸店の閉店で客足が落ちてしまった」と残念そうに話した。 
 シネコンが主流となりつつある中で、独立系の単独映画館も集客に必死だ。同市三の丸のリヴィン六階にある水戸テアトル西友は、都内で上映されたミニシアター作品を一般の長編映画とは別に上映。県内では見ることができなかった話題作を地元で見られるように配慮した。同市南町の水戸リードシネマでは建物内に劇場を設置。十一日からは、映画鑑賞と合わせて迫力のある演劇なども見ることができる。
 茨城大でアメリカ文学などを教えている君塚淳一助教授(46)は「シネコンは人気なので映画人口自体は増えている。規模も大きく新しい建物にファンが引き寄せられるのだろうが、雰囲気のある映画館がなくなるのは寂しい」と話した。